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「危ない食卓」

値段が高いもの=良いものとは決して思わないが、あまりにも安いものには、なにかカラクリがあるに違いない。食品にしても、衣料品にしても。ずっとそう思ってきた。

「少しでも安いものを!と求める消費者にも問題がある」
あのような事件を起した張本人の言葉としては言語道断だけれど、これはズパリ真理をついてもいる。
ミートホープ事件は、この本を読み終える直前に起きた。

「危ない食卓-スーパーマーケットはお好き?-」
(原題は Not on the Label:表示には書かれない事実、とでも訳そうか)
フェリシティ・ローレンス著、矢野真千子訳、河出書房新社

3人の子どもを持つ主婦でもある著者は、英国で20年以上フリー・ジャーナリストとして活躍。時には食肉加工場などにパートタイマーとして潜入して取材もする。
巨大小売業者に食品流通全体を牛耳られてしまっている英国で生じているヒズミ。
「消費者のために、消費者が求める安い商品を届けているだけ」という小売業者の言い分とは裏腹に、直接的な健康被害だけでなく、食の砂漠化、国内自給率の低下、良心的な小規模農家の廃業、外国人労働者問題、世界的な環境問題、南北問題etc....直接的、間接的に一番の被害を受けているのは実は消費者であり、とくに比較的低所得な階層は危機的ともいえる状況に陥っている。なぜ、そういうことになってしまうのか。
本書は具体的な食品を例にとって、その裏事情をわかりやすく解説する。どれも著者自身が取材して得た情報をもとに書かれている。目次を挙げると、次のような内容だ。

1章 チキン-食べ物は安全になっているのか?002_3
2章 レタス-環境を汚す現代の食システム
3章 サラダ-低賃金労働者が頼りの産業
4章 パン-多様性が消えていく
5章 リンゴとバナナ-企業が帝国主義に走る時代
6章 コーヒーとエビ-南北問題が解消しない理由
7章 できあい食品-体にいい食べ物はどこへ行った?

本書の優れている点は、訳のうまさにもあると思う。翻訳本にありがちな読みにくさが皆無なのだ。もちろん、原著者の文章能力が優れているところによる部分が大きいだろうが。

原著が出版されたのは2004年。これは英国での話しであり、日本にそのまま当てはまることではないだろう。
本書の訳者あとがき(日本語版は2005年出版)でも、本書に書かれている全てが“対岸の火事”とは思わないけれど、日本ではカルフールが撤退し、ウォルマートが苦戦していることを挙げて「ほっと胸をなでおろしている」と書かれており、少なくとも日本は英国ほどひどい状況ではないと訳者が捉えているらしいことがうかがわれる。
しかし、ここ数年BSE、鳥インフルエンザ、雪印事件、不二家事件、偽装表示は数知れず・・・・と、たて続けに食の安全に関する問題が発生し、そして今度のミートホープ事件だ。
もう、本書に書かれた内容が「世界のどこかで起っていること」とは言っていられないだろう。
少しでも安いものを求める消費者心理は、英国でも日本でも違うハズがないのだから。

本書を読み終えて、それでもあなたは1円でも安いものを求めてスーパーをはしごする気になるだろうか?

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